ピラティス資格取得後、トレーナーは何を学ぶべきか?|現場で成長し続けるために必要なこと
著者:川口 昊映(FOUNDER / ACADEMY DIRECTOR)
トレーナーやピラティスインストラクターの資格を取ったあと、「次に何を学べばいいのだろう」と悩む方は多いと思います。
新しい資格を取るべきか。
解剖学をもっと勉強するべきか。
セミナーに参加するべきか。
それとも、とにかく現場に出るべきか。
私はこれまで、パーソナルトレーニングスタジオを運営しながら、多くのトレーナーの採用・育成・研修に関わってきました。
ピラティス教育にも携わり、資格を取った直後の方から、何年も現場で活動しているトレーナーまで、さまざまな方を見てきました。
その経験から強く感じているのは、資格取得はゴールではなく、そこからが本当のスタートだということです。
そして資格を取ったあとに最初に必要になるのは、新しい知識や次の資格とは限りません。
私は、一番大きいのは自分の指導に対する「自信」だと考えています。
そのために磨きたいのが、お客様を理解する力、目的に合わせてセッションを組み立てる力、実践を振り返る力です。

資格取得後、多くの人が最初にぶつかる「自信」の壁
資格取得のために勉強し、試験に合格しても、実際にお客様を目の前にすると不安になる。
これはごく自然なことです。
「このセッションの組み立てでいいのだろうか」
「このお客様には何をしたらいいのだろう」
「自分の説明は本当に伝わっているのだろうか」
こうした不安は、資格をもう一つ取ったからといって、すぐに消えるものではありません。
なぜなら自信は、知識だけでなく、
経験する → 振り返る → フィードバックを受ける → また試す
という繰り返しの中で、少しずつ作られていくものだからです。
つまり、資格取得後に必要なのは「場数」です。
ただし、単純にセッション数を増やせばいいわけではありません。
できるだけ多くの身体を見て、考え、実践し、その結果を振り返る。
自分の考えをアウトプットし、他のトレーナーから意見をもらい、また新しい知識をインプットする。
この積み重ねが、自分なりの判断軸につながっていきます。
指導で大切なのは、自分の手応えより「お客様の変化」を見られるか
資格を取ったあと、十分に指導できているかどうか。
これは本人の努力だけでなく、環境や個人の特性、目指すレベルによっても変わります。
ただ、一つ大切にしてほしい視点があります。
それは、
自分が「できている」と思っているかではなく、お客様が求めていることに応え、その先まで導けているか
ということです。
トレーナー本人が満足していても、お客様が満足していなければ十分とは言えません。
反対に、お客様がその場で「気持ちよかった」「楽しかった」と感じていても、そこで終わらせず、その人が今後どう変わっていくのかまで考えることが重要です。
- 身体をどう変えていくのか
- どのように動けるようになってほしいのか
- 数か月後、1年後にどんな状態を目指すのか
ここまで考えられるようになると、セッションの見え方が大きく変わってきます。
教科書の知識を、目の前のお客様につなげられるか
お客様が10人いれば、10通りの身体があります。
100人いれば、100通りです。
体力、筋力、骨格、姿勢、運動習慣だけではありません。
仕事、生活習慣、趣味、睡眠、ストレス、過去の運動経験も一人ひとり違います。
さらに、
「痩せたい」
「動ける身体になりたい」
「姿勢をきれいにしたい」
「健康を維持したい」
など、求めているものもさまざまです。
だからこそ、資格で学んだ知識をそのまま全員に当てはめることはできません。
その人の話を聞き、身体を見て、動きを見て、その日の状態も確認しながら、必要なものを選んでいく必要があります。
ここで重要になるのが、機能解剖学や運動生理学などの基礎知識です。
ただし、目的は筋肉や骨の名前を覚えることではありません。
知識を、目の前のお客様の身体と結びつけられるか。
それが実践力だと私は考えています。
新人トレーナーが最初につまずきやすいポイント
新人トレーナーを見ていると、共通してつまずきやすいポイントがあります。
① カウンセリング
カウンセリングシートの項目を上から順番に聞くだけでは、お客様が本当に求めていることまではなかなか見えてきません。
「痩せたい」と書いてあっても、
- なぜ痩せたいのか
- いつまでに変わりたいのか
- 過去に何を試してきたのか
- 続かなかった理由は何なのか
少し踏み込んで会話することで、初めて見えてくることがあります。
そこで必要なのは、話す力だけではありません。
聞く力、相手を見る力、そして寄り添う力です。
② セッションの組み立て
不安になると、どうしても新しい種目をたくさん覚えようとします。
もちろん種目の引き出しは必要です。
ただ、種目数が増えることと、指導力が高くなることはイコールではありません。
それよりも大切なのは、
- このお客様の身体情報から何を読み取るか
- この目的に対して、なぜこの運動を選ぶのか
- 今の状態なら、どこから始めるべきか
を深く考えることです。
資格取得後の学びは、現場で使って初めて深まっていく
資格取得後の1年間で何をするべきかと聞かれたら、私はまず、経験のある指導者に相談し、フィードバックを受けられる環境で、現場経験を積むことを勧めます。
週5日フルタイムでなくても構いません。
週2〜3日でも、パートでも、業務委託でもいい。
実際のお客様を担当する環境に、自分を置いてみることが大切です。
資格取得で学んだ知識や技術は、実践で使うことで身についていきます。
現場に出れば、
「ここが分からない」
「このお客様への対応が難しい」
「もっとこの分野を勉強したい」
という課題が必ず出てきます。
そこで初めて、次に学ぶべきことが見えてきます。
私自身の育成経験からの目安ですが、学びの比率としては、
現場経験 7〜8:研修・セミナー・自己学習 2〜3
くらいでもいいと考えています。
もちろん、人によって違います。
ただ、研修やセミナーばかり受け続けても、アウトプットする場がなければ、知識はなかなか自分のものになりません。
逆に、現場だけで学ばずにいると、自分の経験だけが正解になってしまいます。
だからこそ、
現場で経験する → 課題を見つける → 学ぶ → 試す → 振り返る
この循環が大切です。

資格を増やす前に、「何のために学ぶのか」を考える
資格を増やすこと自体を否定するつもりはありません。
新しい知識を学ぶことは、とても大切です。
ただ、「何のために取るのか」がないまま資格だけを増やすことには注意が必要です。
まずは、自分が
- 1年後にどうなりたいのか
- 3年後にどうなりたいのか
- 5年後にどうなりたいのか
を考えてみてください。
パーソナルトレーナーとして専門性を高めたいのか。
ピラティス指導もできるようになりたいのか。
講師を目指すのか。
自分のスタジオを持ちたいのか。
目標によって、必要な学びは変わります。
資格を先に並べるのではなく、キャリアの中に資格を配置する。
この感覚が大切だと思います。
成長が続く人には、いくつかの共通点がある
長くトレーナー育成に関わっていると、成長し続ける人と、途中で止まってしまう人には違いがあると感じます。
特に大きいのは、柔軟性と吸収力です。
- これまで学んできたことだけを正解にせず、新しい知識や意見を受け入れられる
- 分からないことを相談できる
- フィードバックを素直に受け止められる
- 自分から行動できる
こういう人は成長が速いです。
反対に、2〜3年経験してお客様から褒められることが増えると、「自分はもう十分できている」と思ってしまうことがあります。
「忙しくて勉強する時間がない」
「今のやり方で困っていない」
そう考え始めると、少しずつ成長が止まっていきます。
だからこそ、自分をどんな環境に置くかが非常に重要です。
- 周囲に相談できる人がいるか
- 一緒に練習できる仲間がいるか
- 自分より高いレベルの人からフィードバックを受けられるか
成長は、一人だけでするものではないと私は思っています。
長く信頼されるトレーナーは、技術以外も大切にしている
トレーナーとしての成長は、セッション技術だけではありません。
店舗で働けば、掃除もあります。
道具を元に戻すこともあります。
他のトレーナーとの連携、会社とのやり取り、研修への参加、そしてお客様との約束を守ること。
こうした一つひとつの行動が、その人の信頼につながっています。
どれだけ技術が高くても、遅刻を繰り返したり、周囲への配慮がなかったり、お客様との約束を軽く扱ったりすれば、長く信頼されるトレーナーにはなれません。
逆に、技術を磨きながら、謙虚さ・協調性・周囲への貢献を大切にできる人は強い。
複数店舗を運営する中で、長く活躍するトレーナーほど、この「軸」がしっかりしていると感じています。
資格取得後の成長を支えるのは「学び続ける力」
資格を取ったあとに本当に必要になるものは、一つではありません。
私は、
- 学び続ける力
- コミュニケーション力
- 自分を成長へ向かわせる意識
- 周囲と協力し、相談しながら進める関係性
このあたりが非常に大きいと考えています。
トレーナーは、一度資格を取れば完成する仕事ではありません。
お客様の身体も目的も一人ひとり違い、自分自身も年齢や経験とともに変わっていきます。
だからこそ、
学んで、現場で使って、振り返って、また学ぶ。
この繰り返しが必要なのです。
TORENAVI ACADEMYで、次の一歩が見えるきっかけをつくりたい
TORENAVI ACADEMYを作ろうと思った背景にも、こうした思いがあります。
数年前、自分のお店を持ちたいトレーナーや、すでに開業しているものの運営に悩んでいる方から相談を受ける機会がありました。
そのとき、自分がこれまで経験してきたことを伝えることで、その人が前に進むきっかけを作れるのではないかと考えるようになりました。
現在は、スタジオ運営やReborn Pilatesでの教育経験も活かしながら、ピラティス、ストレングス、機能解剖学、運動生理学などを横断して学べる環境づくりを進めています。
TORENAVI ACADEMYを、資格をただ増やす場所にはしたくありません。
受講した方が、
「自分のセッションに少し自信が持てた」
「次に何を学べばいいのか分かった」
「お客様への指導が変わった」
「自分のキャリアが見えてきた」
そう感じられる場所にしたいと考えています。
資格を取ったその先で、もう一度自分の目標を考え、次の一歩へ進むきっかけになる。
そんな場所を目指しています。

まとめ|新人だった頃の自分に伝えたいこと
もし新人だった頃の自分に一言伝えるとしたら、こう伝えると思います。
妥協せず、目標と目的を持って走る。
ただし、必ず振り返る。
謙虚さ、協調、信頼、貢献を忘れない。
資格を取ったばかりで不安を感じている人も、今後のキャリアに迷っている人も、焦って答えを出す必要はありません。
まず現場に立ち、経験し、自分の課題を知る。
そして、また学ぶ。
その積み重ねが、トレーナーとしての自信につながっていきます。


