Animal Flowとは?基本Movementをトレーナー向けに紹介

「Animal Flow(アニマルフロー)」という言葉を、初めて聞く方も多いのではないでしょうか。

Animal Flowは、手や足を床につき、自分の体重を使いながら、さまざまな姿勢・移動・回旋などを組み合わせていくムーブメントシステムです。

代表的なものには、四つ這いに近い姿勢をベースとする「Beast(ビースト)」、身体の後方に手をつく「Crab(クラブ)」、低いスクワット姿勢をベースとする「Ape(エイプ)」などがあります。

これらの基本ポジションから、手足を動かす、重心を移動させる、前後左右へ移動する、身体の向きを変えるといったMovementへ発展させていきます。

SNSなどで完成されたFlowを見ると、

「難しそう」
「身体が柔らかい人がやるもの?」
「トレーナーが学ぶと何に活かせるの?」

と感じるかもしれません。

しかし、Animal FlowのMovementを一つひとつ分解してみると、そこには「筋力」「可動性」「安定性」「重心移動」「協調性」といった、私たちトレーナー・インストラクターが普段から扱っている身体機能が関わっています。

Animal Flowの面白さは、難しいMovementができることだけではありません。

さまざまな姿勢や支持条件の中で、自分の身体をどうコントロールするか。

そこにAnimal Flowを学ぶ面白さがあると私は感じています。

この記事では、Animal Flowを初めて知るトレーナー・インストラクターに向けて、基本となるMovementを紹介しながら、「動きをどう見るか」という指導者としての視点までお伝えします。

Animal Flowとは?自分の身体を使ったムーブメントトレーニング

Animal Flowは、器具を使わず、自分の身体を使って行うグラウンドベースのムーブメントシステムです。

特徴の一つは、手と足の両方で床を支持するMovementが多く登場することです。

例えば、

四つ這いに近い姿勢から膝を浮かせる。

手足で身体を支えながら移動する。

支持する手足を切り替える。

身体を回旋させる。

低いスクワット姿勢から手に体重を移し、横方向へ移動する。

こうしたMovementを練習し、慣れてきたら複数の動きをつなげて「Flow」へと発展させていきます。

一見すると、動物の動きを模倣したエクササイズのように見えるかもしれません。

しかし、実際に行ってみると「形を真似する」だけではうまくいきません。

例えば、四つ這いの状態から右手を床から離すとします。

それまで4点で支えていた身体を3点で支えることになり、支持基底面が変化します。

さらに脚まで動かせば、重心位置も変化します。

その変化に対して、残った手足で床を押しながら姿勢をコントロールしなければなりません。

つまりAnimal Flowでは、

支持する → 重心を移す → 手足を動かす → 次の姿勢を作る

という身体のコントロールを連続して行います。

このように考えると、Animal Flowは単に「特殊なMovementを覚えるトレーニング」ではなく、自分の身体をさまざまな条件の中で操作するムーブメントトレーニングとして捉えることができます。

基本ポジション① Beast|四足支持で身体をコントロールする

まず紹介したいのが「Beast(ビースト)」です。

Beastは、四つ這いに近い姿勢をベースとしたポジションです。

両手と両足を床につき、膝を床からわずかに浮かせて身体を支えます。

見た目は非常にシンプルですが、実際に行ってみると意外と難しさがあります。

両手で床を押しながら、体幹のポジションを保ち、両足と合わせて4点で自分の身体を支持する必要があるからです。

トレーナーとして見るのであれば、

・手で床を押し、上半身を支持できているか
・肩甲帯を含めて姿勢をコントロールできているか
・腰部だけに過度な動きが出ていないか
・左右へ大きく重心が偏っていないか
・呼吸を止めずに姿勢を維持できているか

といった部分を観察できます。

ここから片手や片足を浮かせれば、支持点が4点から3点へ変化します。

さらに対角の手足を動かしたり、前後へ移動したりすると、静止した状態とは異なるコントロールが求められます。

「姿勢を作れること」と「その姿勢から動けること」は同じではありません。

Beastは、その違いを体感しやすいMovementの一つです。

基本ポジション② Crab・Ape|支持する方向を変えてみる

Crab(クラブ)

Crabは、身体の後方に手をつき、手と足で身体を支えるポジションです。

Beastでは身体の前方に手をついていましたが、Crabでは後方に手をつきます。

身体を支えるという目的は同じでも、姿勢が変われば身体に求められる条件も変わります。

肩関節の位置や肩甲帯の使い方、胸郭、体幹、股関節など、Beastとは異なる条件で身体をコントロールすることになります。

さらに、Crabから手足を動かしたり、身体の向きを変えたりすると、別のMovementへ発展していきます。

Animal Flowでは、一つのポジションだけを繰り返すのではなく、異なる姿勢や支持条件を行き来します。

この「条件が変わっても自分の身体をコントロールする」という部分が、Animal Flowの面白さの一つです。

Ape(エイプ)

Apeは、低いスクワットに近い姿勢をベースとするポジションです。

BeastやCrabでは手足で身体を支持するところから始まりましたが、Apeではしゃがんだ姿勢からMovementを始めます。

そこから手を床につき、上肢へ体重を移しながら、脚を横方向へ移動させるMovementなどへ発展させることができます。

一般的なスクワットでは、足で床を押しながら身体を上下させます。

一方、Apeでは、

「しゃがむ」
「手を床につく」
「上肢へ体重を移す」
「下肢を移動させる」
「再び足で身体を受け止める」

と、支持する場所が次々に変化します。

同じ「しゃがむ」という姿勢でも、運動課題が変わることで、身体に求められるコントロールも変わっていきます。

基本姿勢から「移動・回旋」へ|Movementはどう発展する?

【画像④:Traveling BeastやSide KickthroughなどのMovement】

Beast・Crab・Apeの基本ポジションに慣れてきたら、Animal FlowのMovementは「移動」や「回旋」へ発展していきます。

例えば、Beastの姿勢をその場で維持できたとしても、前方へ移動すると難易度は変わります。

右手を前へ出せば、支持する場所が変わる。

脚を動かせば、重心が変わる。

その変化に合わせて身体を支え、次のポジションを作る。

これを連続して行う必要があります。

さらにAnimal Flowには、身体の向きを大きく変えるMovementもあります。

その代表例の一つが「Side Kickthrough」です。

四足支持の状態から支持する手足を切り替え、身体を回旋させながら片脚を横方向へ伸ばしていきます。

このMovementでは、

上肢で身体を支持する。

体幹をコントロールする。

股関節を動かす。

胸郭や脊柱を回旋させる。

重心を移動させる。

それらを適切なタイミングで組み合わせる。

といった複数の要素が関わります。

トレーナーとして面白いのは、完成したMovementだけではなく、そこに至る過程を観察できることです。

どの瞬間に動きが止まるのか。

どこで支持が不安定になるのか。

スピードを落とせばできるのか。

可動域を小さくすればコントロールできるのか。

一つのMovementだけで特定の身体機能を判断することはできませんが、こうした条件を変えながらMovementを見ることで、「この人はどのような状況で身体をコントロールしやすいのか、あるいは難しくなるのか」を考える材料になります。

指導して感じる「筋力がある」と「動ける」の違い

私自身、普段はパーソナルトレーナーとしてウエイトトレーニングやコンディショニングを指導しながら、Animal Flowも取り入れています。

そこで興味深いと感じるのが、「筋力があること」と「さまざまな条件で自分の身体をコントロールできること」は、必ずしも同じではないということです。

例えば、普段からウエイトトレーニングを継続していて、スクワットやベンチプレスでは高い筋力を発揮できる方でも、初めてBeastから手足を動かすと、思うように身体をコントロールできないことがあります。

四足支持になる。

手に体重を乗せる。

左右へ重心を移す。

支持する手足を切り替える。

身体の向きを変える。

普段のトレーニングとは違う運動課題だからです。

反対に、ウエイトトレーニング経験がそれほど多くなくても、自分の身体の位置を把握したり、Movementを見て再現したり、動作を滑らかに切り替えたりすることが得意な方もいます。

ここで大切なのは、どちらが優れているという話ではありません。

ウエイトトレーニングとAnimal Flowでは、身体に与えている運動課題が異なります。

だからこそ、私は両方に価値があると考えています。

筋力を高める。

可動性を獲得する。

安定した姿勢を作る。

そして、その身体をさまざまな状況の中で動かしてみる。

Animal Flowを取り入れることで、普段のトレーニングとは異なる角度から「身体を動かす」という課題を与えることができます。

Animal Flowをトレーナーの指導にどう活かす?

Animal Flowを取り入れるからといって、すべてのクライアントに長く複雑なFlowを行ってもらう必要はありません。

私自身も、パーソナルトレーニングでAnimal Flowを取り入れる際、最初から複雑なMovementをつなげることを目的にはしていません。

まずBeastで身体を支持してみる。

そこから手足を一つ動かす。

前後左右へ重心を移してみる。

Apeから横方向へ移動する。

慣れてきたら回旋を伴うMovementにチャレンジする。

その人の運動経験や目的に合わせてMovementを選択し、必要であれば動きを小さくしたり、スピードを落としたりしながら難易度を調整します。

そしてMovementが増えてきたら、2つ、3つと動きをつなげていく。

一つずつ練習していたMovementがつながり、徐々にFlowになっていく過程には、Animal Flowならではの楽しさがあります。

ただし、トレーナーとして大切にしたいのは「Animal Flowをやらせること」自体を目的にしないことです。

これはウエイトトレーニングでもピラティスでも同じです。

「この種目をやる」から考えるのではなく、

目の前のクライアントに、どのような運動課題を与えたいのか。

そこからMovementを選択する。

そうすることでAnimal Flowも、「特別なトレーニング」として切り離すのではなく、トレーナーが持つ運動指導の選択肢の一つとして活用できるようになります。

まとめ|Animal Flowを通して「動き」を見る

Animal Flowは、手や足で床を支持しながら、自分の体重を使ってさまざまな姿勢・移動・回旋を行うムーブメントシステムです。

Beast、Crab、Apeといった基本的なポジションから、

身体を支える → 重心を移す → 手足を動かす → 移動する → 回旋する → Movementをつなげる

と、徐々に運動課題を発展させていくことができます。

Animal Flowそのものを学ぶことも、もちろん一つの目的です。

しかし、トレーナー・インストラクターにとっては、Movementを通して「人が身体を動かすとはどういうことなのか」を考えられることにも、大きな学びがあると私は感じています。

TORENAVI ACADEMYでは、ピラティスやウエイトトレーニングに加えて、ムーブメントトレーニングも学びの一つとして取り入れています。

ウエイトトレーニングで筋力を高めること。

ピラティスを通して身体のコントロールを学ぶこと。

そして、Animal FlowなどのMovementを通して、支持・移動・回旋といったさまざまな運動課題に挑戦すること。

それぞれを別々のものとして捉えるのではなく、さまざまな視点から身体を見て、目の前のクライアントに必要な方法を選択できる。

そんなトレーナー・インストラクターを目指すための一つの学びとして、Animal Flowを活用していきます。

「筋肉をどう鍛えるか」だけではなく、「その身体をどう動かすか」まで考える。

Animal Flowの基本Movementは、トレーナーとして「動き」を見る視点を広げる一つのきっかけになるかもしれません。

執筆・監修:糸数卓也(TORENAVI ACADEMY講師)

TORENAVI ACADEMYについて

TORENAVI ACADEMYでは、ピラティス・ストレングス・機能解剖学・ムーブメントなど、トレーナー・インストラクターの現場につながる学びを横断的に扱っています。

「資格を取ったけれど、その先に何を学べばいいか分からない」

「自分の得意分野以外の視点も身につけたい」

「目の前のクライアントに合わせて、運動を選択できる指導者になりたい」

そんな方が次の一歩を考えられる学びの場を目指しています。

今後、Animal Flowを活用したムーブメントトレーニングについても、基本Movementから実際の指導への応用まで紹介していきます。